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「ねえ、帰ったら?」
『は?聞こえない』
にこり、微笑みながら平気で嘘を吐く夏にもうため息しか出てこない。
『悠が言ったんでしょ?好きにしてって』
「(言わなきゃよかった)はあ…」
『ほら、またため息。幸せ逃げるよ』
「誰のせいで……もう、いいや…」
放課後独特の運動部の声を遠くに聞き
ながら夏と誰もいない廊下を歩く。
嗚呼、イヤだな。
きっとまたあの少し意地悪で綺麗な
先輩方にからかわれる。
なんて、この後に訪れるであろう事態に
肩を落としたその瞬間。
『……あ、悠ちゃーーーん!!』
「!!」
突然響いた声に下がっていた肩がびくりと上に跳ねて、反射で勢いよく後ろを振り
向くと。
『ばあ!』
「ふ…っ、じの…先輩…!」
ち…っ、かい!
もう本当に真後ろ。
あまりの近さに白目を剥きそうになる。
『ドッキリ大成功〜』
暴れる心臓を制服の上からぎゅっと握って落ち着かせようとしている私とは反対に
にこにこと可愛らしい笑みを見せる彼女。
『こーら、後輩をイジメない!』
『いたっ』
彼女、…藤乃先輩の頭を軽くコツンと
小突いた彼こそ。
「あ…ずま先輩…」
東 莉央その人だった。

