『で?結局聞いてないんでしょ』
「聞いてない」
『はあ〜、だからさ、今日一緒に
帰ろうってば』
「今日は部活。だから無理。大体なんで
一緒に帰らないといけないの?1人で勝手に帰れば?」
『なに?照れ隠し?』
「嗚呼、ごめん。家に帰る前に先に
病院行ってきた方がいいね」
ニヤニヤと私の顔を覗き込んで頭の悪い
会話をしてくる夏に眉根を寄せる。
「顔、きもい」
『部活行くよりも眼科行ってきたら?』
『……』
そうやってすぐに仕返しをしてくる
あたりが夏の幼稚さを物語る。
「……はあ。とりあえず今日は部室に
顔を出すから帰れない」
こちらが大人にならなければ夏を相手に
やっていけないのだ。
これは夏と同じ空間で生きるための
教訓でもある。なんてめんどくさい奴。
『ため息吐くとか失礼なんじゃない?』
「本題はそこじゃないでしょ」
ほら、ね?めんどくさい。
『はいはい。部室に顔出すんでしょ?』
「うん」
『ふーん。じゃあ俺も行こっと』
「…………は?どこに?」
『え、部室に』
「なん…」
『写真部の』
…言葉を遮られた。
「え、やだ。却下」
『悠の却下を却下』
「…」
こうなると夏が私の言うことなんて聞く
わけがないことはわかってる。
だから、もう。
「………好きにして」
『そうする』
諦めることが得策だ。

