『やめようよ…悠』
「っ、」
『それはもう過去なんだから…』
彼女のことを“過去”と言う彼は
「(過去になんて、できないくせに)」
藤乃 茉白というその人に
鎖で繋がれたまま過去に囚われていて。
彼女のことを“罪”と言う私は
『今はもう、悠がいる』
莉央を裏切り、私の居場所を奪った
彼女に対する想いだ。
あのまま、幼かった私たちが大人に
なっていればきっと…————。
彼の隣には彼女の笑顔が在り続けて。
私の隣には夏の笑顔が在り続けたのに。
そんな、『if』の世界を渇望する
私と彼がここにいるのだ。

