好きだ。




急いで教室に戻ったが、もう南の姿はなかった。




「帰っちゃったか…」




HRもいつの間にか終わり、教室は誰一人残っていなかった。





寂しい気持ちを抑えながら、そっと窓から顔をだす。





吹奏楽部の音色や、運動部の掛け声。




帰宅している人たちの楽しそうな笑い声。







「…私…放課後はいつもなにしてたっけ」












そっか。





南のところに行ってたんだ。











職員室に行こうとしても、勇気が出てこない。







1対1で会ったら、なにを話したらいいんだろう。




どんな顔したらいいんだろう。






さっき頑張るって決めたのに、口先だけじゃん。







「南…ごめん。」







悔しくて悔しくて、わたしはカーテンをぎゅっと握りしめた。













「トイレ、長すぎな。」













突然聞こえた声に思わず振り返ると







「なんちゅー顔してんねん。笑 赤鼻のトナカイ?」








大好きな人がいた。









「南ぃ〜…」








私は泣き虫になった。南に恋してから。





「お前いっつも泣いてるなぁ。泣くな、アホ」





そう、南は持っていたプリントで頭を叩いた。





「み、南だって…いっつも呼んだらくる〜…」





ぼろぼろと涙を流しながら、私は南の胸を叩いた。








運動会の時だってそう。




いつも苦しい時に南を呼ぶと現れる。





ヒーローみたいに。






「なんやろな、怨念を感じるんやと思うわ笑」


「はぁ?馬鹿にしないでよ!笑」





私がそうやって拗ねると、南は持っていたプリントを広げた。




「…これ、お前が出て行った後に配ったやつや」


「え?わざわざ届けてくれたの…?」


「ま、どーせお前のことやから罪悪感感じてすぐ戻ってくるやろうと思ってな」


「…戻ってきたけど」






軽く南を睨みながらそのプリントを受け取ると



プリントの最後に、猫らしき動物が「FIGHT」と言っていた。




「これ…」


「ん?」


「もしかして…南が描いた?」


「…まぁ、お前みたいなガキにはこういうのが1番かなおもて」




南は少し照れくさそうにそっぽを向いた。





南が、私のために描いてくれたんだ。





「ぷっ…笑 へたくそ笑」


「は!??おまえ、もう一生描いたらん!!』


「あはは笑 可愛いとこあるじゃん南〜♡」


「うるさいわ、あほ!!!」







嬉しくて、嬉しくて




そのへたくそな猫が可愛くて仕方がなくて




さっきまで泣いていた私はすっかり笑顔を取り戻した。