なんの気なしに走って向かった先は
南と花火を見た屋上だった。
結局あの日、花火は見れなかったんだけどね。
屋上の床にごろんと寝転び、空を見上げる。
「…夏も終わりか」
そっと目を閉じ、落ち着かせようとしても
浮かんでくるのは南ばかり。
拒絶され、避けられるのがこんなにもつらいとは思わなかった。
「好きになんなかったらよかったな。」
起き上がり涙を拭うと、
キーンコーンカーンコーン
授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「…あー…南怒ったかなぁ」
教室を出てきてしまったことを、今更後悔する。
あんなに大好きな南の授業を抜けるなんて…
そうため息をついていると屋上の扉が開く音が聞こえて、とっさに振り返った。
「…福原」
福原はよっ!と、軽い会釈をして私の横に座る。
「なによ、笑いにきたの?」
皮肉っぽく言うと、福原はにっこりと笑った。
「励ましに来た」
「…いつも邪魔するくせに。」
「まぁ、俺としては邪魔したいんだけど…」
そう言いながら、福原は私に向き合うと
いきなり私の頬をひっぱった。
「いは!!!は、ははひへほぉ!!(いた!!!はなしてよぉ!!)」
私の顔を見て楽しそうに福原は笑った。
「変な顔」
「なにがよ!あんたのせいでしょ!笑」
「…変な顔して笑ってるお前の方がいいからさ。」
その言葉に、私は離そうとつかんだ福原の手を緩めた。
「南がお前を避けてるのは、嫌いになったからなんかじゃない。
なにか理由があるんだよ。」
南は私の目を見ながら続ける。
「ちゃんと向き合えよ南と。好きなんだろ?」
福原の言葉は私を安心させたのか
さっき拭ったはずの涙がまたこぼれた。
