好きだ。




「母さん!!!!」






走って校門に行くと、智くんと手を繋いで帰ろうとする母親の姿があった。





母さんは俺を見てすごく驚いた顔をした後、ゆっくりと微笑んだ。







「…直人…」


「…はぁっ…はぁ…病気なんて…聞いてへんわ!!」


「…ごめんね。」


「俺……」










息を整え、母さんの方を向くと





気づけば俺よりもすごく小さくて、細くて




年老いた母親がいた。











「…母さんが出て行った後…めっちゃ悲しかった。





めっちゃ辛かった。






許されへんかった。





それは今も変わらん。」








「…えぇ…」







「…でも、それでも好きやった。




なんやかんや幸せでいてほしいって願ってた。




あん時、父さんもひどかったのは知ってる。




家計も苦しくて、育児も全部母さんに押し付けて…」






次々と言葉が出てくる。




蘇る昔の記憶。それは母親と父親と俺の姿。









「…でも俺ここまで来れたから。



やから…母さんも病気さっさと治して…幸せに生きてな。」



「…直人…」



「母さんの事は許されへん。せやけど…やっぱ、家族やから。」










俺のその言葉に、母親は泣き崩れた。















10年以上、ずっと伝えたかった。











「…ありがとう…ごめんね、ごめんね。」






涙を流しながら何度もそう呟いた。







「智くん。母さんのこと、よろしく頼むで。」

「…うん!!」










「南!!!」






ふと俺を呼ぶ聞き慣れた声が聞こえ、振り返ると…





「良かったね!!!」




自分の事のように涙を流して笑っている島崎がいた。







「……おう!ってか、自分縁日戻らんかい!早よ行け、早よ!!!」



「あぁああああ!!忘れてたぁああ!!!

…あ!」






何かを思いついたように島崎は俺の母親と智くんの所に駆け寄った。







どうやらなにか話している…






「よろしくお願いしますね」





母さんはそれだけ言うと笑顔で智くんと手を繋いで去って行った。








「…おい。」



「ん?」



「お前なんて言うたんや」



「さぁーねー?(笑)んじゃ!」



「あ、待て!!こら!!」



「待ちませんよーっだ!!」



「島崎ぃーーーー!!!!」












"南先生は、立派な先生ですよ。優しくて…誠実な"



"本当?良かったわ…貴方、直人の彼女さん?"


"え!!いや、全然!!!"



"ふふっ…直人を…よろしくお願いしますね"











「絶対に言わないよーーーー!!」



「言わんかアホーー!!!」