「…落ち着いたか?」
「うん。ありがとう。」
「そっか…。んなら、行くか。休憩終わってんちゃんお前(笑)」
「あ…ほんとだ!!!行かなきゃ!!」
そう屋上を後にしようとした時
『実は…私…』
その言葉を思い出した。
ダメだ…言わなきゃ…
「島崎?」
南が私の異変に気づき振り返る。
「…どしたん?」
言わなきゃ…
「南!!!!」
南はきっと後悔する。
「お母さんと会って来て!!!」
南に呆れられちゃうかもしれない。
余計な事するなって言われるかもしれない。
だけど…
「…行かんよ。あの女とはもう会う気はない。はよ行くで。」
私は階段を降りようとする南の腕をつかんだ。
「ダメ!!!絶対に行って!!
南、絶対に後悔する!!!
あのね…あの…」
「離して」
そう、南は私の腕を振りほどいた。
その目はすごく冷たい…
「…やだよ。」
「は?」
「…お母さん、病気なんだって。
今月末には治療のために遠くに引っ越すんだって。
都合いいかもしれない。だけど…
南の事、愛してたのは本当だよ!?」
涙がまたポロポロと零れ出した。
「私は後悔したから…
お母さんが死んだあの日、お母さんと喧嘩して…
ひどいこと言っちゃって……
後悔した時にはもう遅かったから…!!」
そう…あの日…
あの日に限ってお母さんと喧嘩してしまったんだ
本当は伝えたい事いっぱいあったのに…
「……島崎…」
バカだな私…
泣いてばっかり…
「島崎、ごめん。ごめんな。」
南の手がそっと頬に触れる。
「…でもな、もう変わらへんねん。
あいつが俺を裏切った過去は変わらんねん…
やから…今更会って謝られても…俺…
許す事なんてできひん…」
その時、初めて南は涙を流した。
まるで子供のような純粋な涙。
「…だけど…
南も本当は…お母さんを愛してるでしょ…?」
南の目をじっと見つめると、南も私の目を見つめた。
「………わかった。」
南は私から離れ、ゆっくりと階段を降りて行った。
「…み…南?」
