「私が…?」





「…うん。」







南がゆっくりと私に近付く。






私と…南が…?








「…なんか抱えてるんやろ?」





その言葉に、私は堪えていた涙が溢れ出した。








「な…っ…なんにもない…!」








泣いてる理由は…南の彼女さんの存在の大きさに気づかされたからじゃない…







ずっと…ずっと抱えて来た…












南は私の頭を優しく撫でると、そっと抱き寄せた。










「…お母さん…亡くなったんか?」










誰にも言わずに生きてきた。









言ったって、同情されるだけ。









"可哀想な子"そんなレッテルを貼られ







生きていかなくちゃいけないんだ…









「…平気だよ…?…私」



「なんで強がらなあかんねん」



「…なんで…」



「他の先生方から聞いたんや…





島崎は中学の時にお母さんを事故で亡くされて…今はお父さんと2人で暮らしてるって。




やから、可愛がってやってください。





島崎は俺の事慕ってるからって。」






「…みんな知ってたんだ…」




「生徒達には隠してるみたいやけどな…」



「そんな考えてくれてたんだ…」



「うん。でも、同情は嫌やろ?」



「嫌。」



「ははは(笑)…せやな。」







ずっと笑顔で隠しておくつもりだった。






どんなに悲しくても寂しくても…









だけど…南にはお見通しだったんだね。






「…お母さんとお父さんと食べる御飯が大好きで…


お母さんといるお父さんはすごく幸せそうで。



私も、幸せで。



でも…急にいなくなっちゃった…





お父さんも毎日寂しそうなの…」










次々と涙を流して話す私を、南は何度も頷きながら慰めてくれた。












「…やから放っておかれへんかった。」





そっと身体を離した南は優しくそう言った。





「…お前の方が俺なんかよりも何倍も辛いのにな。お前は道外さんと…すごいわ。」


「…だって…お母さん悲しむじゃん」



「せやな。」










その日の南はびっくりするくらい優しくて








太陽みたいにポカポカしてた。