「南!!」
南を探して、探して探して…
やっと見つけた場所は学校の屋上だった。
「…おぉ…島崎。」
…南…目赤い…
「…大丈夫?」
泣いたんだ…
「…うん。」
そう悲しげに外を見る南に、私は何も言えない…
どう声を掛けたらいいのか分からない
何を言っても…南の気持ちが軽くなる事は無いのかな。
「南…私…「俺さ。」
何かを言い掛けた時、南はそっと口を開いた。
「俺が中学の時、両親が離婚してん。」
「…うん」
「そんでな…初めは性格の不一致。
そう聞かされとってんけど…」
南の視線がゆっくりと下に向けられていく。
「…母さん、不倫しとったみたいや。」
なんとなく予想はしていた。
なんとなく…
「…知らされてなかったっていう事実と、裏切られたっていう事実が一気に押し寄せて来て…
俺、一回道外してしもたんやわ…」
「…そうなの?」
「学校サボって…めんどくさくてな。
毎日が嫌でしょうがなかった。
万引きとかもした。タバコも吸った。酒も飲んだ。
…やけどそん時に…
今の彼女が救ってくれたんや…」
ドクン…
胸に重い針が突き刺さった。
「…彼女はどんどん非行に走っていく俺に対してこう言った。
私は昔の南くんが好きです。ってな…
初めはムカついた。そんなの知らんわ!言うて…
俺さ、大阪から出て来たからそんな友達も多くなかったし…ましてや好きなんて言われた事もなかった。
クラスでどこか浮いた存在やった俺に、彼女はそう言ったんや。
皆が俺から離れる中、彼女だけはその流れに逆らって俺と向き合ってくれた。
よう考えたら…転校して来た時に一番最初に声掛けてくれたんも彼女やったわ…」
今の南がいるのは…その彼女さんのおかげ…
ぐっと下唇を噛み締めて、零れそうになる涙を抑えた。
「…でもな…俺…思うねん。」
南の視線がこちらに向けられ、泣きそうな私と目があった。
「お前は俺と似てる気がする。」
