「いらっしゃいませーーー!」
「縁日ですよーー!」
「手作りのお祭りに参加してみませんかー?」
大勢の来訪者で賑わう文化祭。
私たち1年5組の縁日も、順調に賑わっていた。
「おめでとうございまあああす!ぬいぐるみ、プレゼントです♪」
「わぁー!良かったね〜!はなちゃん!」
「くまさんだー!」
ちっちゃい子からおじいちゃんおばあちゃんまで様々な年代の人達が訪れていた。
可愛いなぁ〜ちっちゃい子って。
見てるだけで癒される〜
「あの、すいません。スーパーボールすくいやってもいいですか?」
「あ!はい!どうぞ。」
親子で来たのだろう、可愛い男の子と綺麗なお母さんがスーパーボールすくいを楽しんでいた。
夏祭りかぁ…
お母さんと最後に行ったのいつだっけ…
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『沙奈!スーパーボールすくいしよ!』
『えーもう子供じゃないんだから』
『沙奈はまだ子供よ!ほら、楽しいよー♪』
『もー…あっ!』
『沙奈下手くそ〜!って、あ!!』
『あはは(笑)お母さんも下手くそじゃん(笑)』
『ほんと…昔は上手かったのになぁー』
『うふふふ(笑)』
…お母さん…
「あの、すいません」
「…え?あ、はい!」
「しばらくの間、この子の事見てていただけますか?」
「え?はい、大丈夫ですよ!あ、じゃあ休憩所にいると思うのでそちらの方に…」
「ありがとうございます」
それだけ言うと母親はぺこりと頭を下げてそそくさと出て行ってしまった。
…って言っても…
「熱中しすぎだし(笑)」
「ぶーーー…」
「ぼく、何歳?」
「4さい!」
「へぇー!4歳なんだ!なんて名前なの?」
「さとし!!」
「さとしくんかぁ…さとしくんは、今日はお母さんと2人で来たの??」
「うん!!」
「そっかぁ…「島崎!」
ん…?
この声は…
「…南!!!」
振り向くとそこには甚平を着た南がいた。
「な、な、な…」
かっこよすぎでしょ!!!!!!
「えぇーーー!!甚平!?」
「なんやねん、お前がレンタルある言うたんやんけ。ん?なんやその子。お前の子供か?(笑)」
「ち、違う違う!!お客さんの…連れてた子!」
「ほぉ。ぼく、名前なんて言うん?」
「さとし!!」
「ほー!ええ名前やな。ん?お前全然取れてないやんけ。俺が教えたるわ。」
南はさとしくんの頭をぽんぽんと優しく叩くと、さとしくんの隣にひょいとすわった。
「ええか?これはな、こうやるんや。」
「こー?」
「ちゃうちゃう、これをな、こうやって…」
さとしくんに必死にスーパーボールすくいのやり方を教える南は、なんだかお父さんみたいだった。
南と結婚したら…こんな感じなのかな。
そう考えると嬉しくて、すごく幸せだった。
「わぁー!さとしくんすごい!」
「へへへ、とれた!!」
「うまくなったぞー!さとし!ようやったな!」
「うん!!」
「ふふ(笑)なんか南、お父さんみたいだね(笑)」
「そうか?(笑)…まぁ、せやな。かわええな。子供。大事にしたらなあかんで…」
そう呟いた南の横顔はなんだかすごく寂しそうで…
「…本当だね。」
なんだか、切ない気持ちになった。
