「おまたせー!!」
「沙奈!どうだった?」
「バッチリ!来てくれるって♪」
「良かったじゃん!!よし!がんばろ!」
「うん!!」
「あ。てかさ、見て。」
「ん?」
佳菜子の指の先を辿っていくと、そこには甚平を着た福原の姿があった。
うわぁ…かっこい。
思わずそう呟いてしまうほどのかっこよさ。
焼けた肌に少し筋肉のついた身体。
福原は甚平がすごく似合っていた。
「もう、女子みんなメロメロだよ。すごいねぇ〜」
「ほんとだねぇ…すごい。」
でも…
やっぱり南も甚平似合うと思うんだよなぁ〜♡
「何ニヤニヤしてんの」
「なんにもなぁいー!」
想像するだけでキュンキュンしてしまう私は、南にどっぷりとハマってしまっていた。
あーーーー!ダメだダメだ。気を引き締めないと!!
「よしっ」
福原に見惚れてる女子達を横目に、私は縁日の準備を続けた。
購買から仕入れたジュースの箱を三階の教室まで運び入れる作業は、思ったほどきつい。
「後30分で人来ちゃうし…もーーー!」
階段をゆっくりと登って行き、やっと二階まで来たその時
「きゃっ!!!!」
とんっ…
足がもつれ後ろに倒れそうになった私を、誰かが支えてくれた。
「危ねぇ…」
「ふ、福原!!」
「ったく、どんくせぇなぁ…」
そう言いながら私の持っていた箱を、ひょいっと持ち上げズカズカと階段を登って行く福原。
よ、よかった…
あのまま転けてたらどうなってたんだ…
「あ、福原!待って!!」
「ん?」
「あ、ありがとう!!」
「…お、おう。」
「うん…そ、それにしても、福原甚平似合うね!!びっくりしちゃった!」
「そう?」
「うん!皆かっこいいって言ってたよ!!」
「…お前は?」
「え?」
「…ううん。なんでもない。ありがとな」
「うん!じゃあ箱、よろしくね!」
よし、後は…倉庫だ!倉庫行かなきゃ…
「…浴衣!」
倉庫に向かおうと背を向けた私に、福原の声が届いた。
「ん?」
「似合ってるな。」
福原はそれだけ言うと、また階段を登って行った。
えっ。
なんか無駄にキュンとしたんだけど。
「ありゃあ…モテるわ。うん。」
夏だから夏だから。
そう言い聞かせて、熱くなる頬を一生懸命仰いだ。
