「直人、起きて」
聞き慣れた声が聞こえ、重たい瞼をゆっくりと開けた。
「ん…詩織…?」
「もう、すぐ寝るんだから。」
そうか…ここ詩織の家やっけ。
「ごめんごめん。俺どんくらい寝てた?」
「30分くらい。疲れてたんだね。大丈夫?」
中田詩織(ナカダシオリ)
もう付き合って9年ほどになる俺の彼女だ。
「大丈夫。ありがとな」
そう言うとふわっと優しく微笑む彼女は
両親が中学の時に離婚して、やさぐれてしまった俺をここまで支えて来てくれた。
「…詩織。」
「ん?」
「好きや。」
「ふふっ…どうしたの急に(笑)」
「わからんけど…なんか…好きやねん」
「…よしよし。」
どうしようもなく大切で、どうしようもなく愛おしい。
俺の中ではいつだって詩織が一番だった。
だけど…
『南に…会いたくて…』
そう言う彼女の目はどこか悲しくて
俺に似ていた。
『…母さん!!!』
あの頃の俺に。