親愛なる母へ




それから亮が退院するまでの間、毎日のように彼女もそこへやって来るようになった。

彼女は亮の話を聞きたがり、亮は学校の話や部活の話を、おもしろおかしく話して聞かせた。

その度彼女はふんわりと笑い、亮はその笑顔が好きだった。


『お見舞いに行くね』


亮の退院の前日、淋しそうに眉を下げる彼女に、亮はそう約束した。

それ以来、亮は度々、精神病棟へ足を運んだ。

亮の想像していたよりずっと平和で、それでもやはり独特の空気の漂うその場所へと。