親愛なる母へ




『交通事故に遭ったんです。そりゃあもう、痛かったですね』


亮は冗談で言ったのだが、彼女は深刻そうに眉を寄せ、ギブスのついた足をじっと見つめた。

その様子が、亮にとってはなんだかおかしくて、


『ここ、どうぞ』


笑いを噛み殺しながら、ベンチの端に寄ってスペースを作った。

遠慮がちに腰掛けた彼女に、問う。


『ここで働いてるんですか?それとも、お見舞いか何か?』


しかし彼女は、目を泳がせる。

そして弱々しく、人差しを遠くに向ける。


『あそこに入院してます……精神病棟……です』