『交通事故に遭ったんです。そりゃあもう、痛かったですね』 亮は冗談で言ったのだが、彼女は深刻そうに眉を寄せ、ギブスのついた足をじっと見つめた。 その様子が、亮にとってはなんだかおかしくて、 『ここ、どうぞ』 笑いを噛み殺しながら、ベンチの端に寄ってスペースを作った。 遠慮がちに腰掛けた彼女に、問う。 『ここで働いてるんですか?それとも、お見舞いか何か?』 しかし彼女は、目を泳がせる。 そして弱々しく、人差しを遠くに向ける。 『あそこに入院してます……精神病棟……です』