親愛なる母へ




散歩でも行こうか、と連れ出して、病棟の外の花壇に沿って、ゆっくりと歩く。


「疲れたら言って」


亮がそう言うと、彼女はうつむいたまま、小さく頷いた。

まださっきのことを引きずっているらしい。

彼女は落ち込むと、長い。

しかしそういうところも亮は愛しく思っているのだが、彼女にはちっとも伝わらない。


「あ、見て。あのベンチ」


そう言うと、彼女はようやく顔を上げる。


「懐かしいね。座ろうか」


少し表情が柔らかくなったのを見て、亮は彼女の手をそっと引いた。