親愛なる母へ




亮は彼女の手から漫画を取り上げて、傍らの布団の上に置く。

そして、彼女の両手をまとめて、包み込むようにして握る。


「わかってもらえるまで何度でも言う。俺は本気だよ」


覗き込むように、亮は彼女の目を見つめる。

黒い瞳がゆらゆらと揺れ、亮は罪悪感さえ覚える。

今にも泣きそうだ。


「ごめん。また困らせたね」


手をほどいて、亮は彼女の髪に触れる。

少し癖のある柔らかな髪の感触を確かめるようにそっと撫でると、その拍子に彼女の目から一粒の涙が落ちた。