未央子は顔を伏せて、手の甲で乱暴に頬をこする。 その手に、涙で落ちたマスカラの黒が移り、それを見た瞬間、恥ずかしさが込み上げてきた。 知らない人に、しかも同年代の男に、こんなみっともない姿を見られてしまうなんて。 何も言えずにうつむくしかできない未央子に、再び声が落ちる。 「もう暗いし、まだ夜は冷えるから、帰った方がいいよ」 その言葉を聞いて、とっさに腹部に手を当てた。 もし本当に妊娠をしていたとしたら、こんなに体を冷やしてしまうのは不味いに決まっている。