親愛なる母へ




イギリスでもバンドを組んで、未央子の作った曲を演奏したが、つたない英語で意思疎通もままならず、細かなニュアンスをうまく伝えられずにもどかしい思いをしてばかりいた。

本場のロックを聞いて生きてきた彼らは、音楽的な感覚が鋭く、素晴らしい演奏をしたが、彼らとの間にはいつも越えられない壁のようなものがあった。

未央子は彼らを好きだったし、彼らも未央子を可愛がってくれた。

しかしそれでも、その壁は結局最後まで壊せなかった。


「一葉と演りたいなぁ」


一葉のドラムを思い出す。

未央子がスカウトしたのだが、あっという間に実力をつけて、中学校の先輩が組んでいた本格的なバンドから誘われるまでにもなった一葉。

小山田はどうかわからないが、一葉ならきっと今も音楽を続けている。