親愛なる母へ




思えば、もう久しく真剣にギターを弾いていなかった。

サークルでは恋愛にうつつを抜かしていたし、ライヴもやっていない。

思うように指が動かず、色々な意味を込めて舌打ちが出る。

今更ながら、くだらない男に夢中になって音楽を疎かにしていたことを後悔した。

未央子は無意識に、中学生の時に初めて作った曲のコードを追う。

小山田と一葉と一緒にアレンジし、文化祭のステージで演奏した曲だ。

あの時のスポットライトの熱さと、暗い体育館の中に見たオーディエンスを思い出しながら、目を閉じて歌う。

下手な演奏だったが、あれほど胸が熱くなったステージはなかったかもしれない。