親愛なる母へ




使い込まれたストラトキャスターは、中学校に上がる頃に一目惚れし、未央子が初めて手にしたギターだ。

美しい木目を生かすように、控えめにオレンジに近いブラウンの塗装がほどこされている。

ずっと貯めていた小遣いでも足りず、父親にねだって説得するのに苦労した。

未央子の音楽人生は、全てこのギターと共にあるといっても過言ではない。

あぐらをかいてギターを構え、弦に挟んでいたピックを取る。

耳だけで軽くチューニングをして、適当にコードを弾き連ねた。

アンプに繋がないエレキギターは、淋しげに細く鳴く。