親愛なる母へ




未央子はワンルームの自宅で、鳴らない携帯電話をにらんでいた。

待っているのは、母の同級生である兵藤と、そして旧友の一葉だ。

小山田宛てのメールはエラーで戻ってきてしまい、それがますます未央子を苛立たせた。


「もー……」


ローテーブルに肘をつき、手のひらに顎を乗せる。

反対の手は、苛立ちをぶつけるように指でテーブルを叩いていた。

ふいに、今朝聞いた亮の言葉が耳の奥で鳴る。


『未央子がほんとにギター弾けるのか確かめないとな』

「亮のやつ…!」


未央子は反射的に、スタンドに立ててあるエレキギターに手を伸ばした。