親愛なる母へ




「大学に入るまで、バンドやってなかったの?」


亮のその言葉に、未央子ははっとして目を輝かせる。


「そっか!一葉と小山田に連絡取ってみる!」


彼らは、中学生の頃、未央子が初めて組んだバンドのメンバーだ。

ベース担当の小山田篤志とドラム担当の伊藤一葉。

未央子はギターボーカルを務めた。


「昔の仲間?」


くるくると表情を変化させる未央子を見てひとり笑いながら、亮は汗を拭いて鞄を持つ。

うれしそうに携帯電話を操作する未央子は、さっきとは打って変わって楽しそうだ。


「うん!最高のメンバーだよ。またライヴやりたいなぁ。……あ!」


さっそくメールを打ち始めた未央子が、ぱっと顔を上げて亮を見上げた。