親愛なる母へ




亮は、グラウンドに未央子がいるということに違和感を覚えてならないといった表情で、未央子に歩み寄る。

破れたようなカットソーにミニスカートと、シルバーアクセサリーという出で立ちでは、そう思うのは無理もない。


「おはよう。早いな」


不真面目に見える未央子に、皮肉めいた冗談のつもりで言ったのだが、未央子は初めて見る光景に気を取られて、それに気付かない。


「亮って走る人だったんだね」


“走る人”という表現がおかしくて、亮は小さく笑う。


「マラソンサークルの一員だからね」


しかしその言葉が、未央子を瞬時に不機嫌にさせた。


「へえ。亮がサークル入ってたなんて、知らなかった」


遠慮のない刺々しい言葉が吐き出される。