親愛なる母へ




泣き疲れて、鼻をすすった。

膝にうずめていた顔を少し上げると、いつの間にか陽は落ち、空の向こうから闇が訪れようとしている。

ひんやりとした夜の空気が、辺りを支配しつつあった。


「気が済んだ?」


ふいに、冷たく低い声が落ちてくる。

驚いて顔を上げると、知らない顔が無表情で見下ろしていた。

その風貌から、同じ大学の学生だと予測できるだけだ。