親愛なる母へ




兵藤本人は仕事で家にいない可能性が高いが、未央子はじっとしていられず、兵藤宅の電話を鳴らした。

幸い留守ではなく、彼の妻が出る。


「久保といいます。私の叔父が、兵藤さんの中学時代の同級生で、お伺いしたいことがあってお電話しました」

「はあ……。久保さん、ですか」


ややこしい説明はすぐには理解されないのは仕方なく、兵藤夫人は不審そうに声色を曇らせる。


「兵藤さんのお姉さんが、私の母と同級生だと聞きました。実は今、母と連絡が取れなくて、知人を当たっているんです」


その説明が効いたのか、兵藤夫人が話に食い付く気配が感じられた。