親愛なる母へ




食堂はまだ混む時間ではなく、辺りも騒がしくない。

未央子はためしに、五十音順に並ぶ名簿の最初から電話をかけてみることにした。

しかし一件目は繋がらず、二件目も留守番電話に繋がるのみ。

仕事をしていれば家を空けている時間だから、仕方ないといえば仕方ない。

根気が必要になる作業だということはわかっていた。

食堂に人が増えてくる。

ひとまずこれで打ち切ろうと、最後の番号を押した。

携帯電話を耳に当てて、コール音を聞く。

それが、ようやく途切れた。

未央子は、繋がった、と亮に目で合図する。


「浜田さんのお宅ですか。……私、久保といいます」


話をわかりやすくするために、叔父の姓、つまり母の旧姓を名乗ることにした。