虐待をして、そして幼い未央子を捨てたということだけで、未央子の母親は充分に罪深い。
しかしそれに加え、非人道的な行動と、そして法をも犯していたことを知った。
母親の記憶が、さらに濃い黒で塗りつぶされていくようだった。
それは恐怖だ。
しかし。
「本当のことは、本人にしかわからない」
亮の言葉に、未央子は顔を上げる。
亮はテーブルの上に置いてある同窓会名簿の辺りに視線を落としたまま、続ける。
「第三者の言うことは重要な情報だけど、そこにはその人の主観が含まれている。情報の選別は、慎重にしないとな」
未央子は手元の湯飲みに視線を落とし、頭の中を整理する。