そこから現れたのは、久保でも、久保夫人でもなく、小さな体だった。
中学生くらいのその女の子は、先ほど電話に出た、未央子の従妹に違いない。
黒髪を一つに結んで、勝気そうな目が睨むようにこちらを見ている。
後ろ手にドアを閉めた彼女に、亮も未央子も身構えた。
「ねえ」
大きなサンダルを重たげに引きずりながら、彼女が歩み寄ってくる。
その手には、何かの冊子が抱えられていた。
未央子の前に来ると、それを両手で差し出して言う。
「これ、必要でしょ?」
表紙を見ると、“第一中学校 三十一期生 同窓会名簿”と書かれている。
「学年は違うから、役に立つかわからないけど」
そう言うとようやく、その小さな少女はにこりと笑った。


