親愛なる母へ




唇を噛む未央子に、亮はそっとヘルメットを差し出して言う。


「墓参り行こう」


実の娘が会いに行けない分、孫の未央子が手を合わせてあげよう、と言っているように聞こえた。

母の過去を恨んでも、それと祖父母を想うこととは別だ。

未央子は頷いて、亮の手からヘルメットを受け取った。

しかし、かぶろうとしたところで、その手は止まる。

ガチャリと音がして、再び久保家の玄関の扉が開いたのだ。