久保は苦々しく言い放つ。 「君にこんなことを言うのもなんだが、勝手な人だよ、あの人は。どれだけの人が心配し迷惑するかなんて、全く考えていないのだから」 言葉と、冷たい視線に、強く頭を殴られた気がした。 未央子はそこに姉弟の愛情を必死で探そうとするが、そんなものは欠片もなかった。 しかしそれは無理もないことだと、すぐに知ることになる。 「親の死に目にも会いに来なかったし、葬式にも顔を出さなかったくせに、遺産をそっくり持ち出して姿を消したんだ」