親愛なる母へ




きっぱりとした物言いに、未央子は口を開くことさえ忘れる。


「姉とはもう何年も音信不通です。こっちが縁を切られたんだ」


久保はそう付け加え、A4サイズの紙を差し出してくる。


「祖父母の墓の場所です。妻が渡せと言うので。私達が教えられるのは、これだけです」


久保夫人の優しく友好的な対応との落差に、未央子は放心するしかなかった。

身動きの取れなくなった未央子に代わって、亮がその紙を受け取る。

パソコンから印刷したらしい地図の横に、おそらく久保夫人が書いたと思われる墓地の番地のようなものが記されている。

ふと、玄関の方を見ると、久保夫人らしき女性が覗いていた。

亮と目が合うと、申し訳なさそうに表情を曇らせ、深々と頭を下げる。