親愛なる母へ




再び小一時間ほどバイクを走らせ、叔父の家へと辿り着いた。

家の前にバイクを停めてヘルメットを脱ぎ、乱れた髪を整える。

すると、玄関のドアが開いて、父親ほどの年齢の男性が出てきた。

未央子も亮も、彼が未央子の叔父なのだと瞬時に理解する。


「長坂未央子です」


未央子がその場で頭を下げる。

しかし久保の表情は厳しく、未央子はひるんだ。


「叔父さん、ですよね……?」


好意的でない表情の真意を探るように、未央子は久保に歩み寄る。

しかし久保の次の言葉に、ぴたりと足を止める。


「せっかく来てもらって申し訳ないが、話すことはありません」