親愛なる母へ




久保夫人は、未央子の両親が離婚し、未央子は父親に引き取られたことを知っていた。

しかし、未樹が半ば失踪状態であることは知らず、大いに驚いていた。

もともと姉弟の仲が良い方でもなく、久保と未央子の母親が連絡を取り合っているのを目にしたことがないという。


「母と連絡が取りたいんです。久保さんはご存知ないですか?」

「主人に聞いてみますね。もうすぐ帰ってくるはずだから、この携帯電話に折り返しても?」

「あの、今からお宅に伺ってもかまいませんか?実は今、田舎に来ていて、祖父母が亡くなったことを知ったんです。祖父母のお墓参りもしたいので」

「そうだったの……。ええ、ぜひ来てください。お待ちしていますね」


その言葉に、未央子の強張っていた頬から力が抜ける。

母親の情報は得られなかったが、ひとまず一歩前進だ。