幾度目かのコール音が途切れ、あどけない少女の声が応えた。


「はい、久保です」


未央子の心臓が跳ねる。

この子はきっと従妹だ。

その可能性があるとわかっていたのに、電話を取ることは予想していなかった。

声の調子から、おそらく小学校の高学年か中学生くらいだろう。

まだ幼い彼女には、こちらの事情を知らせるべきではない。

未央子は汗ばむ手で携帯電話を握り直し、口を開いた。


「長坂といいます。お父さんはいらっしゃいますか?」

「父は出かけています。もうすぐ帰る予定なんですけど……。母でよければ、かわりますか?」


さして不審がるでもない淡々とした受け答えに、未央子は胸をなで下ろす。


「お願いします」

「お待ちください」


電子音がメロディーが奏で始め、未央子は長く息を吐く。