やがて戻ってきた彼女は、未央子に小さな紙切れを手渡す。


「おまたせ。これ、写してきたから、持っていきなさい」


裏の白い新聞広告に癖のある字で、住所と電話番号、そして“久保一典”という名前が書かれていた。


「この住所、途中で通ってきたところだな」


メモを覗き込みながら、亮が言う。

この街と、未央子達の住む街のちょうど中間に位置する街だ。

それを聞いて、未央子の心は高鳴る。

すぐに会える場所にいるのだ。

亮を見上げると、「行ってみよう」と頷く。

二人は並んで、女性に頭を下げる。


「ありがとうございました」

「いいえ。久保さんによろしくね」


礼儀正しい態度で、未央子の第一印象は払拭できたらしい。

女性は優しく微笑んで、二人を見送った。