親愛なる母へ




しかし未央子は、すぐに足を止めた。

亮が横に並んで見えた未央子の横顔は、悲しげな色をたたえていた。

未央子の視線の先を辿る。

民家と民家の間に、ロープの張られた更地がある。

そしてそこには、薄れて読みにくいが、赤い文字で確かに“売地”と書かれた看板が立てられていた。

亮は、そこにかつて彼女の祖父母の家があったのだと、容易に理解した。