親愛なる母へ




幼少の頃からエレキギターと歌を好んでおり、イギリスでもバンドを組んで活動していた未央子は、日本での仲間探しのため、軽音楽サークルに入会した。

そこで出会ったのが、あの、どうしようもない男だった。

彼は大学四年生だが、二度の留年を経ており、未央子の五歳年上だ。

彼女の年代にとって、五つの歳の差は、彼が大人であると感じるのに充分だった。

たとえ頭の軽い男だとしても。

女性の扱いに慣れており、話術に長け、華やかな人生経験をおもしろおかしく話す彼に、未央子は惹かれてしまったのだ。