親愛なる母へ




「何か思い出した?」


亮の声で、過去から引き戻された。

振り返ると、ペットボトルが二本差し出されている。


「どっちがいい?」


緑茶と紅茶のうち、未央子は紅茶を手に取る。


「ありがと」


キャップを開けて喉に流し込むと、自覚していなかった乾きを知る。

ゆっくりと喉を潤し、息をつく。


「この先に商店街があるの。そこを抜けたら、すぐ」


国道に沿って指を向ける。

そうしてみると、急に実感が伴い、未央子はわずかに緊張を覚えた。

すがるように亮を見上げると、亮は未央子を安心させるように微笑んだ。