親愛なる母へ




未央子は駐車場から車道の方へ歩き、そこから延びる国道を見る。

おぼろげだが、記憶が戻ってくる。

たしかこの先に商店街があって、その終わりを右に曲がると、祖父母の家だ。

商店街は何度か歩いたし、古い食堂でソフトクリームを食べたことを覚えている。



祖父母は、生きているだろうか。

記憶の中では、二人とも優しく、小さな未央子にとても甘かった。

骨張った祖父の手が、未央子の小さな手をすっぽりと包み、その手に引かれて商店街で駄菓子を買った。

祖母とおはじきで遊び、未央子のぬいぐるみに手縫いの服を着せてくれた。

未央子は二人によく懐いていたし、この街に来るのが好きだった。

母の虐待からの救いを、彼らに求めていたのだろうか。