親愛なる母へ




一つだけ鮮明に覚えているのは、その街の入り口に架かる赤い橋。

塗り替えられたのか、記憶の中よりも鮮やかな赤が、二人を迎えた。


「亮、もうすぐ!」


赤信号で停まった瞬間、未央子はエンジン音と排気音に負けまいと、声を張り上げる。

亮は頷き、やがて見えてきたコンビニの駐車場にバイクを停めた。


「コンビニなんてなかったのに」


ヘルメットをはずし、未央子がつぶやく。

おかげで街並みも違って見え、未央子の記憶を乱す。