親愛なる母へ




産婦人科の傍の小さな公園で、未央子はひとしきり涙を流した。

その手には、今日も亮のハンカチが握りしめられている。

鼻をすすり、未央子は言う。


「あかちゃん、いたんだよ。嘘でも、気のせいでも」


何もないお腹に手を当てる。


「でも、あたしは母親にはなれないんだ。たぶん、そういう資格とか能力とかが、欠けてるんだと思う」


その言葉を聞いて、亮は未央子が自棄になっているのだと勘違いする。


「そこまで言う必要ないだろ」


未央子はゆるく首を横に振る。


「違うの。血筋ってやつ」