耳元で、かすれる声が聞こえた。 体を起こすのを手助けすると、悲しげな色をたたえた瞳が、未央子を見つめた。 「ごめんね……」 耳を、疑った。 何が、“ごめん”? 思い出してしまったのかと、思った。 しかし未樹の目は複雑な色に揺れ、彼女自身の戸惑いを語っている。 うわ言のように繰り返させるのは、心の奥底に閉じ込めた記憶の仕業か。 「ごめん……ね……」 指先が、熱を持つ。 ちりちりとしびれるようなこの感覚は、怒りか、悲しみか。 震える唇が開きかける。 それを無理に、きつく噛みしめた。