親愛なる母へ




未央子の首筋を過ぎる彼女の熱い息が、未央子の肩にしがみつく彼女の熱い手が、


『未央子』


記憶を、呼び覚ます。



まさか。

……違う、これは、確信だ。



それを裏付けるように、亮が頷いたのを、彼女の肩越しに見た。

冷たい何かが全身を駆け抜けたかのように、ぞわりと体が震える。

こんな“偶然”が、起きるものか。

だったらこれは、“運命”なのか。

それとも、母と娘の間に頼りなく存在する糸の気まぐれか。



会わないと、決めていた。

身を切るような思いで、無理に納得した。

それなのに、なぜ。