親愛なる母へ




瞳が、何かを探るように揺れた。

しかし次の瞬間、その目は閉じられる。

突如、顔を歪めた彼女が、頭に手を当てた。


「痛……っ」


バランスを失った体が、ぐらり、と揺れる。

反射的に駆け寄った未央子に、彼女は崩れるように倒れ込んだ。

杖だけがアスファルトに叩きつけられ、甲高い音を響かせる。

肩口に落ちてきた頭をそこで支えると、柔らかな髪が未央子の頬を撫でた。

その感触が、茫然としていた未央子を正気に戻す。

浅い呼吸音が聞こえ、彼女の肩が上下する。


「大丈夫ですか?どこか座れるところに……」


彼女の肩を支えながら辺りを見回すけれど、彼女はゆるく首を振る。


「ごめんなさい、大丈夫。すぐにおさまるから、少しだけ、このままで……」