親愛なる母へ




未央子は未成年だが、病院によっては、中絶の際に親の同意が必要ない場合もあると聞いたことがある。

しかし、どうしたって相手の同意は不可欠だ。

本当の相手が責任逃れをした以上、偽りの相手にサインをもらうしかない。

亮は、他に頼る者のいない未央子を放っておくことができず、その役割を引き受けた。


「よかった、なんて言うな」


亮が言う。


「お前はそんなに無神経な奴じゃない」


未央子の頬に貼り付いた偽りの笑顔が、徐々にほどけていく。

そして、その目からは大粒の涙が落とされた。