「ごめん、遅れた!」


息を弾ませながら両手を合わせる未央子に、亮は申し訳なさそうに眉を下げる。


「いや、悪かったな、迎えに来させて。本番前って忙しいんだろ?」

「大丈夫。リハ終わったし、あたしの出番は後の方だしね」


今夜、未央子はライヴハウスで唄う。

一葉が所属するバンド、ジェイビーズを含む対バンライブの幕間に、アコースティックギター一本で弾き語りをする。

数曲の演奏だけなのだが、亮は行くと言って聞かなかった。

会場のライヴハウスが奥まった路地裏にあるので、わかりやすい場所で待ち合わせ、そこまで未央子が迎えに来たのだった。