大学の長い長い夏休みが終わる。

秋の深い香りを乗せた心地良い夕刻の風を切って、未央子は走っていた。

中途半端に色の抜けた髪を揺らし、着慣れない清楚なシャツは脱いで、再びロックテイストのファッションを身にまとった。

これでいい。

母の見たかった“大きくなった未央子”は、こういう姿なのだ。

空を見上げると、青から橙へと美しいグラデーションを描いていた。

その視線を下ろした先に、見慣れた背中を見つける。


「亮!」


声をかけると、色素の薄い目が小さく微笑む。