親愛なる母へ




大量にある手紙を無作為に何通か読んだところで、白い便箋に、水滴が落ちた。

これは何だろうと、未央子は頭の隅で考える。

そうこうしているうちに、いくつもの水滴が落ちては、便箋に吸い込まれ、染みを作っていった。


「勝手な人だな……」


ため息と一緒にこぼれた声が涙に濡れていて、未央子はようやく、その水滴が自分の涙だと認識する。

しかし、わからなかった。

これは何の涙なのか。

母の手紙に感動でもしたのか。


「ほんと、最低。肝心なこと、何も書いてないし」


未央子の期待に、母は的外れの言葉を返すばかりだ。