しかし、困った。 おなかの中には、あの男の子どもがいる。 いや、正確には、その可能性があるに過ぎないのだが。 しかし彼女にとって生理が遅れるというのは初めてのことで、それは確信に近かった。 心当たりも、充分すぎるほどにあるのだ。 長坂未央子は、大学のキャンパスの中で宛てもなく歩を進めていた足を止める。 ほとんど無意識に、右手が腹部に添えられた。 そこには何も感じることはできないが、なぜだかいつもより温かい。