親愛なる母へ




母のかつての主治医である桐島医師はおそらく、一連の出来事を知っている。

彼が紹介した医師のもとでの治療中に事故が起きたのだから、伝わるのは当然のことだ。

一度だけ会った桐島医師の言葉が蘇る。


『君は強い子だ。どんなことがあっても、きっと受け止められるよ』


あの言葉の真意を、未央子はようやく知ったということだ。

しかし未央子は、受け止める自信などなかった。

息苦しいほどに胸を痛め、叫び出してしまいそうな衝動をこらえるように息をひそめるしかできない。

自分は、弱くてたまらないと思った。